「編集王」に見る浪速節の力 | 偽脚本書きが漫画に挑戦

「編集王」に見る浪速節の力

編集王

 全16巻 作者 土田 世紀 名言:「お前の人生は全20巻じゃねーんだ」


ストーリー:明日のジョーを読んだことがきっかけで、ボクシングに青春を捧げた主人公、桃井カンパチは網膜剥離によってボクシングを続けることができなくなってしまう。そして悩んだ後漫画の編集者になり編集王を目指していく。しかし漫画界の内側は想像していたのとはまったく違う、世界だった。


漫画業界を考えさせられる。


週間少年ジャンプなどを見ていると漫画のジャンルがある程度決められていることがわかる。

冒険ものにサッカー、野球といったスポーツもの、ラブコメ。ジャンルは雑誌によってある程度決められているようだ。漫画家はけっして書きたいものを書こうとしているのではないのかもしれない。そんなことを考えさせてくれるお仕事漫画。


作品の構図:主人公カンパチは、編集者として漫画家の作家性を信じている。しかし編集長は、ヤングシャウト(架空の漫画雑誌 100万部雑誌として扱われている)の売り上げを伸ばすためにはエロやいままで売れたことのあるジャンルを作り続ければいいと考えていた。カンパチによって悪者とされてきた、編集長や名前だけが一人歩きした大物漫画家にも、かつては強烈jな漫画にたいしての情熱があったことが分かってくる。


 簡単に言ってしまえば、カンパチという純粋な主人公によって、情熱を失っていた編集者や漫画家が心を改めていくという構図。


物作りのジレンマ: 読者の評価が絶対であることが、作品の質を上げることを妨げることもよくある。例えばドラゴンボールやスラムダンクといった漫画は一億部を超える売り上げを達成した。ならばその二番煎じも受けると考えるのは当たり前だ。実際にワンピースや数あるスポーツものは売り上げを順調に伸ばしている。しかし新しいものが売れる土壌はどんどん削られていってしまう。ドラゴンボールが作り上げたセオリーが面白いのは当たり前だ。でもそれは自分で作ったものといえるのか?


 王道と呼ばれるものを一生懸命作ることが難しいことであることはわかっているが、常に新しい考え方やストーリーを生み出していくことこそ作品を作っていく意義なのではないかと思う。読者は面白いものを捜し求めている。いままで作り上げてきたセオリーを用いたパクリに勝つのは容易ではない。



面白いものが売れるというのは避けがたいジレンマなのではないかと思う。